噛み合わせが、差し歯にも入れ歯にも矯正にも重要な事は解かると思いますが、どういう事なのかという事が解からないことが多いので、ここで説明します。
出生から顎の筋肉とともに発達しはじめた顎は、お乳を吸うために発達していきます。歯は遺伝的に大きさや
生える順番は決まっていますから、その生きるための行為により生える方向や噛み合わせが決まってきます。
目的に沿って発達するのです。歯や筋肉は飲む、食べるという行動に合うように適合していく訳です。そして効率的に良く噛めるように成長していきます。従いまして食べるものやストレスに伴う歯ぎしり等に順応して変化していくわけです。
ここで何らかの原因で虫歯や歯周病になったり、綺麗になる為に歯の矯正をする場合、この自然の摂理を汚すような事をすれば、問題が生じてきます。(歯医者さんがやる事はどうもこの関係を狂わせてしまう事が多いようです。)歯の形、噛み合わせの部分の溝や頬側,舌側の豊留や形もすべて食べ物が歯ぐきを損傷しないように、歯と歯がこすれて食べ物をすりつぶす時に歯によけいな力が加わらないような形に神様?が作ってくれています。人工的に作った歯は所詮、歯モドキであり見た目に綺麗でも、顕微鏡レベルではざらざら、がたがたしていてとてもバイキンが繁殖しやすいのです。
例えば、上下の前歯、特に上の前歯の裏側と下の前歯の先端をこすりあわせて何かを噛み切る訳ですが、その接触具合が狂うと、殆どの場合、上の前歯の差し歯が取れたり、折れたりします。
又、奥歯の場合少々噛み合わせが高くても、歯はその高さに順応して来ますが、高いが故に噛むたびに動揺します。すると生きている歯の場合血管の揺さぶりによりしみるという現象がおきます。上下的にそして左右的に強く当たる所があるとしみるのです。この揺さぶりのためにセメントが破折しやすく早期の脱落が生じます。
それ以外にもしみるからでしょうか、清掃がうまくいかず歯周病になる事が多いのも特徴です。
また、元々ストレスで自律神経に不調和がある場合、それが引き金になり自律神経失調症のような症状が出る事があります。これらが、歯科治療により体の調子がおかしくなったとか噛み合わせにより病気が治ったとかいう話の実態なのです。
医療は常に間違いを犯し、其の積み重ねで現在があるということですが、私も色んな理論や新しい技術というものを勉強したり、使った事があります。しかしやったほうが本当に良かったか今でも考え込んでしまいます。噛み合わせの病気でいえば、まず歯が反応します。(しみたり、動揺したり、歯折をおこしたりします。)それから歯茎、骨、最後に筋肉ではないでしょうか。これは、患者さんの抵抗力、ストレスの度合い、年齢、性格なども関係します。
従いまして、新しく差し歯や銀歯を入れる場合以前の状態に問題がなければ、なるだけ其の形の記録を模型としてとって置き新しいものを作る時の参考にすべきなのです。そういう事をせず作られるため、しっくりこない、強く当たり過ぎて痛む、歯が動き歯の間に物が詰まる原因や歯周病がひどくなる、筋肉が痙攣を起こし口が開きにくくなる、或いはそれらの事が引き金となり(ストレスに輪をかける)全身的な症状を来たす方があると考えられます。
従いまして、歯科の受診後、体に変調を来たした場合は、歯科治療そのものがストレスの原因なのか元々強いストレスを感じていて歯がおかしくなり受診したのか区別する必要がありますし、金属のアレルギーの問題もストレスや体の抵抗性の減弱と関係がありますので良く調べる必要があります。
噛み合わせについては、基本的には歯科医が術前の歯の状態を記録し、それを丹念に再現できるかどうかにかかっています。又歯型を取る時に変形させないとか模型(お口の中の模型)を変形量が少ないように作るとか機械につける時に狂わせないとか細かな事に注意しなくてはなりません。精度としては0.001mm単位の精度が要求されるべきです。又、歯を削り変な銀歯やブリッジと呼ばれるものが入れられている場合、しばらく仮歯で様子をみて、仮歯が削れて行きその形が落ち着くのを見計らって、歯同士の噛み合わせの状態を再現します。
症例1.男性 56歳
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主訴:わずか数ヶ月前に作成したブリッジ(3本の金属がつながった状態、真ん中の歯が無く橋のような形なのでこう呼ぶ)が脱離、再装着するもしっくりこない、装着した右側の冷水痛、肩や顎の筋肉の懲り。
ブリッジが無い状態で上下の歯の隙間を観察すると、明らかに歯の削り方がすくなく、相当高いブリッジが装着されていた。金属が変形しない程度の厚みを確保する為に、残念ながら歯を1mmほど削り、上下の隙間を確保、再形成しブリッジを作成、噛み合わせの狂いが無いように調整後装着、しみることも肩や顎の筋肉の凝りもない状態。
7年ぶりに別の歯科医院で作成した銀歯が脱離して来院。7年前に装着したブリッジには何の問題もない。
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症例2.女性 33歳
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主訴:左上のブリッジがしっくり来ないので食べずらい。職場の某病院の歯科・口腔外科で治療。
奥歯が2本無く、前後の3本の歯を削り新しくブリッジを装着したが、噛みあわせを狂わせたらしく自分でもどこで噛んでいいのか解からない。健康な状態を記録せずに削った為に噛み合わせを再生するのが困難な状態。或いは変な状態で無理をして噛んでいた為に、筋肉がおかしくなっていた。オープンバイトといい、前歯が全然上下でぶつからないので高さの基準が難しい状態であった。
取り合えず仮のブリッジを装着し、顎を誘導しながら噛みあわせの形を試行錯誤で調べていった。ある程度噛みやすくなった所で、柔らかいプラスチックの仮歯が削れて顎の動きを再現できるようになった段階で、慎重に噛みあわせを記録し金属のブリッジに移行させた。
仮のセメントで仮につけて1−2週間、本人の装着感を確認。問題が無いということで装着。
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症例3.女性 75歳
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主訴:入れ歯を無くしたので再生してほしい。7−8年前より入れ歯が合わずに痛くて食べれない。何回か作ってみたが、すぐ使わなくなる。
よくお聞きすると、食事の時は入れ歯をいれずにお粥のような物と柔らかくしたおかずで済ませている。入れ歯は人に合うときや外に外出する時だけ付けている。・・・合わない入れ歯を入れている為に、歯茎を支えている骨が溶けて、ぶよぶよになった触ると痛い歯茎を持つ方が多い。
一般的にはこの部分を切り取り、痛みが無くなってから入れ歯を作るのが最も良い方法だが、殆どの方は嫌がる。入れ歯を入れずに食事をしていた為に、舌の異常な動きと顎の異常な運動により、入れ歯の型を取る事や、噛みあわせを取るのがとても難しく、最終的には、顎のどんな動きにたいしても安定した入れ歯を作る為に歯の並べ方に特別な配慮が必要だった。
また噛みあわせが変わらないように、セトモノの硬い歯を使い、0.001mmの単位で均等に歯がぶつかるように調整した。・・・こういった入れ歯を入れていない方は、顎を固定できない為に、姿勢のバランスをくずしている方が多く、顎が安定し良く噛めるようになると、ボケが回復したり歩行がしっかりできるようになることが多い。 |
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